0. はじめに
2023年現在のモバイル通信の主力ネットワークは、ずばり、「4G」です。
「4G」をさらに分けると、LTE Advanced(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル)、AXGP(WCP)、WiMAX2+(UQC)があります。現在の「4G」の礎となったLTE(3.9G)は、2010/12/24、NTTドコモが我が国で初めて商用サービスを開始しました。
一方、最新ネットワークである「5G」も、徐々にではありますが、エリアが拡大しています。
「5G」は、2020/3/25、商用サービスを開始しました。残念ながら、我が国では、新型コロナ禍やウクライナ危機などの社会情勢に起因し、諸外国(米国、北欧、中韓など)に比べて基地局開設が遅れてしまっていますが、移動体通信事業者各社は、2024年を「本当の5G元年」と位置づけ、これまでの4年間に比べて総務省への基地局開設の申請を加速し、エリア展開を本格化しています。
では、「1G」、「2G」、「3G」もあるの?「6G」もいつかは始まるの?
この様な「?」をお持ちの方も少なくないだろうと思います。簡単にお答えすれば、
・ 「1G」 = いわゆる アナログ方式(FDMA)。 1979年、サービス開始。2000年、サービス終了。
・ 「2G」 = いわゆる デジタル方式(TDMA)。 1993年、サービス開始。2012年、サービス終了。
・ 「3G」 = いわゆる CDMA方式。 2001年、サービス開始。2026年、サービス終了予定。
・ 「6G」 = 5Gの次の未来のネットワーク。 2030年頃、サービス開始予定。
※ 広義には、W-CDMA/HSPA(3.5G)、CDMA2000-1x/EV-DO(3.5G)も「3G」に含まれる。
便宜上、cdmaOne(2.5G)も「3G」に含まれることがある。
※ 便宜上、PHSも「2G」に含まれることがある。
※ アメリカなどでは、2023年現在も、アナログ方式の利用者が多い。
もっとザックリと言ってしまえば、こんな感じでしょうか?
・ 1980年代 ・・・ 「1G」の全盛期。
・ 1990年代 ・・・ 「2G」の全盛期。
・ 200X年代 ・・・ 「3G」の全盛期。
・ 2010年代 ・・・ 「4G」の全盛期。
あっ!この様なとても興味深いリンクも見つけました。
https://prebell.so-net.ne.jp/tips/pre_22101802.html
☆ これはすごい(驚)。「7G」についても書かれている・・・。
ここでは、移動体通信の黎明期(1970年代)~現在(2023年)を振り返ってみたいと思います。
テーマは、次の4つです。
==============================
1. 移動体通信事業者の歴史
2. 移動体通信事業者向け周波数
3. 移動体通信事業者通信速度
4. 移動体通信事業者向け電話番号
==============================
若い年代の皆様(主に、1980年代,1990年代生まれ)にとっては、歴史(上記1)をただ文章で眺めるだけでは、少々退屈かも知れませんね(汗)。ただし、
・ (上記2) 使用されている周波数がどんどん広がっていく様子。
・ (上記3) 「ドラゴンボールの戦闘力」さながらの通信速度のインフレの様子。
・ (上記4) 「090」、「080」、「070」の電話番号容量がどんどん増えていく様子。
これらを眺めてみるのも、意外と面白いかも知れませんよ(笑)。
一方、「西部警察」や「あぶない刑事」をリアルで視ていた世代の皆様にとっては、
「おぉ、なつかし~~!」
「あぁ、そうだったな~~!」
が眠っているかも知れません(笑)。
実際に筆者も、携帯電話など無線通信に興味を持ったきっかけは、「西部警察」(幼少期の1980年にテレビ朝日系列で放送開始)のオープニングで、石原裕次郎さん(木暮謙三捜査課長役)が自動車電話(携帯電話の先祖)を使用するシーンに衝撃を受けたことです。これまで、通算約22年間、携帯電話ネットワークなど無線通信の仕事に携わってきましたが、現場にて原点に立ち返るたびに、このシーンを思い返しておりました。
まぁ、余談はこれくらいにしておいて、(いや、全然「これくらい」になっていませんが(汗))、早速始めさせていただきます。どうぞ、最後までお付き合いください。
1. 移動体通信事業者の歴史
「移動体通信事業者」(MNO = Mobile Network Operator)とは、「携帯電話などの物理的な移動体通信回線網を自社で保有し、自社のブランドで直接サービスを提供する事業者」と定義されています。同義語に「移動体通信キャリア」がありますが、これは、音声やデータなどの信号を「運ぶ」という役割に由来しています。尚、「移動体通信回線網」には、コアネットワーク(CN)、基地局ネットワーク(RAN)、CNをRANやインターネット網と接続するルーター、CNやRANの監視制御装置、伝送路、基地局から発射される電波を含みます。
少し難しい言葉が並べられていますが、国(総務省)による定義も記載しておきます。
============================================================
電気通信役務としての移動通信サービスを提供する電気通信事業を営む者であって、当該移動通信サービスに係る無線局を自ら開設(開設された無線局に係る免許人等の地位の承継を含む)又は運用している者。
============================================================
一方、最近よく耳にする様になった「仮想移動体通信事業者」(MVNO = Mobile Virtual Network Operator)は、この対義語で、「移動体通信回線網を自社では保有せずに、移動体通信事業者の提供する設備との接続 または サービスの利用により、自社のブランドでサービスを提供する事業者」と定義されています。
2023年現在、移動体通信事業者には、次の6社が存在します。
・ NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル : LTE、5G、W-CDMA
・ Wireless City Planning (WCP)、UQコミュニケーションズ (UQC) : BWA (AXGP、WiMAX2+)
この内、KDDIグループは、沖縄地区のみDDI沖縄セルラーとして独立存続しており、「KDDI+OCT」と表記されることもあります。一方、ソフトバンクグループも、2022年までウィルコム沖縄のみ独立存続していましたが、現在はソフトバンク本体に吸収されています。
我が国の移動体通信の歴史は、旧電電公社(現NTTドコモ)が、東京23区内にて、「世界初の800MHz帯アナログ自動車電話システム」のサービスを商用化した、1979年12月3日から始まりました。1988~1996年にかけては、新規参入(第一陣の旧IDO,DDIセルラー、他)のラッシュ。1999~2015年にかけては、新規参入(旧イー・モバイル、他)に加えて、合併、商号変更、事業継承などが非常に目まぐるしく発生。2020年の最後の新規参入(楽天モバイル)、2021年のPHSのサービス終了を経て、現在に至ります。
気が付けば、もう44年ですね。筆者でさえこう思うほどです。昭和時代から移動体通信の現場の最前線でご活躍される偉大なる諸先輩方は、自分など全く足元に及ばないほど強くこう思われていることだと思います。
その内のお一人が、KDDIの創業者・稲盛和夫さんですね。著書・「稲盛和夫一日一言」をいつもカバンに入れて持ち歩いております。
https://note.com/chichinote/n/n28555ece75fb
では、44年間の歴史を追いかけてみましょう。
ただ文章で眺めるだけでは、少々退屈だなと思う方もいらっしゃるかも知れませんね(汗)。せめて、1.6節だけでもご覧いただければ、これまでにどの様なモバイルネットワークが存在したのか、おわかりいただけるかなと思います。もし、1.1~1.5節のどれか1つでもあとからご興味を持っていただければ、ご一読ください。
1.1. 4G,5G ☆ 2023年現在のモバイル通信の主力NWと最新NW ☆
● 2023年現在、移動体通信事業者には、次の6社が存在します。
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル : 4G、5G
Wireless City Planning (WCP)、UQコミュニケーションズ (UQC) : BWA (AXGP、WiMAX2+)
※ KDDIは au,UQ mobileの2ブランド、ソフトバンクは SoftBank,Y!mobileの2ブランドを導入。
● LTE(3.9G)のサービス開始当初は、3事業者(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)+イー・アクセスの体制でしたが、LTE Advanced(4G)のサービス開始とほぼ同時期に、ワイモバイル(イー・アクセスの後継会社)が吸収されて一旦3事業者に戻り、5Gのサービス開始とほぼ同時期に、楽天モバイルが新規参入して再び4事業者となっています。
● BWA(4G)のサービス開始当初は、2事業者(WCP、UQC)の体制で、こちらには変化はありません。
● 尚、ソフトバンク傘下にWCP、KDDI傘下にUQCが入っているため、実質的に4グループ(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル)体制となり、現在に至ります。
● LTE、5G共に、NTTドコモが最初にサービス開始しました。ただし、5Gは、KDDIと僅か1日違いですが。
▶ 「3.9G」と「4G」の違い、「CA」(キャリアアグリゲーション)、4Gの通信速度の変遷(ダウンリンクの理論値)については、3.4節にて後述します。
1.2. 1G ☆ 自動車電話,携帯電話の黎明期 ☆
● 我が国の移動体通信の歴史は、旧電電公社(現NTTドコモ)が、東京23区内にて、世界初の800MHz帯アナログ自動車電話システム(1G)のサービスを商用化した、1979年12月3日から始まりました。
● ここに注目が集まるのは、当然のことですが、1988年の準地域無指定方式導入もまた、1990年代の携帯電話の急速な普及拡大に重要な意味を持つ歴史的な一歩となっています。
● 旧IDO,DDIセルラー(現KDDI)は、「新規参入第一陣」と呼ばれ、準地域無指定方式導入とほぼ同時期に参入し、NTTドコモと同じく、アナログ方式(1G)のサービスを提供しました。NTTドコモと同じ800MHz帯が割当てられています。
● 1992年時点で、NTTドコモ(全国)に続き、IDO(東名)、DDIセルラー(東名以外+沖縄)の全営業エリア展開が完了しており、「自動車電話,携帯電話の普及拡大の時代」を迎えることになります。
● 稲盛和夫さんのDDI設立、花井正八さんのIDO設立により、NTTにライバルが出来て、いずれも移動体通信の黎明期を知る現在のNTTドコモ、KDDIが切磋琢磨して来られたことが、現在の魅力的な両社の礎になっていると言っても過言ではありません。
▶ 「準地域無指定方式」については、4.6節にて後述します。
1.3. 2G ☆ 自動車電話,携帯電話の普及拡大 ☆
● ①1993年のデジタル方式(2G)サービス開始による周波数利用効率向上、②1994年の自動車電話,携帯電話買取制度開始、③1996年の地域無指定方式導入による電話番号容量増加。この3つが普及拡大に重要な意味を持つ歴史的な一歩、いや、三歩となっています。
● 旧デジタルホン,デジタルツーカー(現ソフトバンク)、旧ツーカー(現KDDI)は、「新規参入第二陣」と呼ばれ、上記①②とほぼ同時期に参入し、デジタル方式(2G)のサービスを提供しました(1Gのサービス提供は無し)。NTTドコモ、旧IDO,DDIセルラー(現KDDI)と違う1.5GHz帯が割当てられています。
● 普及拡大により、上記③から数年経過した1999年、従来10桁だった自動車電話,携帯電話番号の11桁化が行われています。平成時代初期の実際の加入者数の推移(推定)は、次の通りです。
1989年=25 → 1992年=137 → 1994年=213 → 1996年=1032 → 1999年=4152 (単位:万回線)
● 1Gでは用途が音声通話に限定されていましたが、2Gでは用途にデータ通信も加わり、「移動体通信の通信速度」の概念は、上記①とほぼ同時期に生まれました。
● 1994年時点で、NTTドコモ、新規参入第一陣の2社、新規参入第二陣の3社を合わせて6事業者が存在していました。1999年のデジタルホン,デジタルツーカーの合併、2001年のIDO,DDIセルラーの合併、2005年のツーカーの事業継承を経て、3事業者(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)体制となり、「モバイル通信の高速化の時代」を迎えることになります。
● 2Gの最盛期は、NTTドコモが、サービスエリアの広さに加え、iモードの成功もあり、KDDI、ソフトバンクを加入者のシェアで圧倒していました。
▶ 「地域無指定方式」については、4.7節にて後述します。
1.4. 3G ☆ モバイル通信の高速化 ☆
● 3Gのサービス開始に先駆け、日本国内で唯一、旧IDO,DDIセルラー(現KDDI)がcdmaOneを商用化しました。これは、デジタル方式(2G)の圧倒的な加入者のシェアを誇るNTTドコモに対し、品質(つながりやすい、切れにくい、音質が良い)、サービス(データ通信速度、国際ローミング)で勝負することが目的でした。日本国内で初となるCDMA方式を使用したネットワークでもあります。これが、いわゆる「2.5G」です。
● 3Gのサービス開始時、KDDIはCDMA2000、NTTドコモ、旧ジェイフォン(現ソフトバンク)はW-CDMAを導入しました。移動体通信向けに新設された周波数・2GHz帯が割当てられています。
● 3Gの拡張規格として、KDDIはCDMA2000-1x/EV-DO、NTTドコモ、旧ボーダフォン(現ソフトバンク)はW-CDMA/HSPAを導入しました。これにより、2G(28.8kbps)、2.5G(64kbps)、3G(384kbps)を大幅に上回る、数Mbpsの高速データ通信が実現しました。これが、いわゆる「3.5G」です。
● 旧イー・モバイル(現ソフトバンク)は、2007年に参入し、W-CDMA/HSPA(3.5G)のサービスを提供しました(3Gのサービス提供は無し)。移動体通信向けに新設された周波数・1.7GHz帯が割当てられています。
● XGP(ウィルコム → WCP)、WiMAX(UQC)は、いずれも、2009年に開始されたBWAサービスです。日本国内で初となるOFDMA方式を使用したネットワークでもあります。2.5GHz帯が割当てられています。
● 2010年時点で、3事業者(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)、W-CDMAの新規参入の1社、BWAの新規参入の2社を合わせて6事業者が存在していました。ソフトバンクがイー・アクセス(イー・モバイルの事業継承先)、ウィルコム(WCPの事業継承元)を完全子会社化しており、KDDIの100%出資によりUQCは設立されているため、実質的に3グループ(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)体制により、「2023年現在のモバイル通信の主力・4Gのサービス開始」を迎えることになります。
● 3G,3.5Gの最盛期は、KDDIが、CDMA2000の恩恵を受け、シェアを大幅に拡大することに成功しました。これは、KDDIが、cdmaOne(2.5G)のベースを持ち、CDMA2000(3G)への移行がスムーズに実行出来て、スタートダッシュに成功した一方で、NTTドコモ、ソフトバンクが、デジタル方式(2G)からW-CDMA(3G)という全く違うネットワークへの移行を余儀なくされて、苦戦を強いられたことが要因です。
▶ 3Gの通信速度の変遷(ダウンリンクの理論値)については、3.3節にて後述します。
1.5. PHS ☆ ポケベル→ケータイへのショートリリーフ ☆
● PHSのサービス開始当初、DDIポケット、NTTパーソナル、アステルの3事業者が存在しました。1.9GHz帯が割当てられています。
● 携帯電話の2Gのサービス開始後、自動車電話,携帯電話買取制度が開始されましたが、ランニングコスト(基本使用料,通話料金)がまだ高額でした。PHSは基本料金が安く(携帯電話=約7000円、PHS=2700円)、移動体通信の回線契約を初めて検討する加入者や、ポケベルからの乗換えを検討する加入者には、携帯電話は一旦見送り、PHSを選択する加入者が多かったです。この様な経緯から、PHSは、「ポケベル→ケータイへのショートリリーフ」としばしば言われます。
● 携帯電話の2Gのサービス開始後、用途にデータ通信が加わりましたが、まだ低速でした。PHSは通信速度が高く(携帯電話=9.6kbps、PHS=32kbps)、データ通信の需要が大きい利用者のシェアも拡大しました。
● PHSは移動機の送信出力が小さく(携帯電話=200mW、PHS=10mW)、医療従事者の加入者のシェアも拡大しました。
● 2001年のDDIポケット(当時)の定額制IPデータ通信サービス(AIR-EDGE)開始をトリガーに、PHS事業者同士での競争に伸び悩み、また、ほぼ同時期の携帯電話の3Gのサービス開始をトリガーに、携帯電話事業者との競争にも伸び悩む様になりました。2008年までに、DDIポケット以外の2事業者がサービスを終了しました。
● 唯一サービスを継続したDDIポケット(正確には後継会社のウィルコム/WILLCOM)は、音声通話やパケット通信の定額サービスをいち早く開始し、携帯電話事業者との差別化を図りました。しかし、携帯電話の4Gのサービス開始少し前に、携帯電話事業者も同様のサービスを開始し、PHSの優位性は徐々に失われていきました。2021年、DDIポケット(正確には後継会社のソフトバンク/Y!mobile)もサービスを終了しました。
● 一見、不遇な歴史を辿った様にも思えるPHSですが、2009年にウィルコム(DDIポケットの後継会社)がサービス開始した次世代PHS・XGP(1.4節にて先述)は、2010年のWCPへの事業継承、2012年のAXGP(1.1節にて先述)への移行を経て、2023年現在も、LTE、WiMAX2+と並んで、4Gの一翼として現役です。
1.6. モバイルネットワークの変遷
1.7. 無線アクセス方式,変調方式
▶ 無線アクセス方式、変調方式については、別ブログ(4G,5G 高速化技術関連)に詳細記述予定です。
2. 移動体通信事業者向け周波数
旧IDO,DDIセルラー(現KDDI)が新規参入第一陣として1Gのサービスを開始した当時、旧郵政省(現総務省)から移動体通信事業者向けに割当てられていた周波数帯は「800MHz帯」のみで、周波数帯幅も合計56MHzのみでした。1G → 2G → 3G → 4Gと進化する中、「1.5GHz帯」、「2GHz帯」、「1.7GHz帯」などの新設により、周波数帯幅も合計776MHzに増えました。さらに、5G向けに、「3.7GHz帯」、「28GHz帯」などの新設により、周波数帯幅は合計4176MHzに。約30年間でおよそ75倍にも広がったことになります。
6Gのサービス開始に向けてさらに急速に広がっていくことは間違いなく、事業者や大学の研究施設などにおいて、6G向けの新しい周波数帯候補の実用性の研究が進められています。
ついつい、普段の癖でいきなり「周波数帯」について語り始めてしまいましたが、その上では、切っても切れない関連用語がいくつか存在します。ここでは、2023年現在、KDDI および NTTドコモの4Gに使用されている「800MHz帯」を例に挙げて、簡単に説明します。
▶ 「周波数帯」/「帯域」/「バンド」(Band)
4Gの「周波数帯」には、「800MHz帯」の他、「900MHz帯」、「1.5GHz帯」、「1.7GHz帯」、「2GHz帯」があります。ただし、これは、日本独自のネーミングなので、海外で通用するかどうかは、国によって違います。よって、「800MHz帯は、大体、800MHzから900MHzまでの間の周波数。」というニュアンスだと考えていただいて結構です。
▶ 「バンドナンバー」(Band Number)
KDDI および NTTドコモのいずれも同じ「800MHz帯」が使用されていますが、KDDIには「バンド18」(B18)、NTTドコモには「バンド19」(B19)が割当てられています。これは、世界共通のネーミングです。
▶ 「周波数帯幅」/「帯域幅」/「バンドワイズ」(Band Width)
KDDI および NTTドコモのいずれも同じ「800MHz帯」が使用されていますが、KDDIには860MHz~875MHz、NTTドコモには875MHz~890MHzが割当てられています。この場合、「周波数帯幅」は、いずれも15MHzということになります。
▶ 「周波数」(Frequency)
「周波数帯」や「バンドナンバー」は、「800MHz~900MHz」、「860MHz~875MHz」などの様に、ある程度幅を持たせて数字を指定しますが、「周波数」は、「868.762755MHz」などの様に、ピンポイントで数字を指定します。
▶ 「チャネル」(Channel)
「チャネル」と言えば、すぐ思い浮かべるのは、やはりテレビですよね。現在の首都圏の地上デジタル放送は、「NHK=1CH、日本テレビ=4CH、テレビ朝日=5CH」などのチャネル番号が広く知られています。一方、「NHK=557MHz、日本テレビ=545MHz、テレビ朝日=539MHz」などの周波数はあまり知られていません。ただし、テレビでも、移動体通信でも、「周波数」と「チャネル」がペアで存在すると言う点は同じです。
では、周波数の世代毎の変遷を見てみましょう。
2.1. 周波数 - 1G
● 1Gには、800MHz帯が使用されました。
● 1979年12月3日、旧電電公社(現NTTドコモ)が、東京23区内にて、1G(世界初の800MHz帯アナログ自動車電話システム)のサービスを開始しました。ネットワーク、電話番号割当はそれぞれ、NTT方式/地域指定方式が使用されました。周波数は、870MHz~885MHz(15MHz幅)が割当てられました。
● ただし、自動車電話そのものの歴史はもう少し古く、1946年、アメリカ・サウスウェスタンベル社が、ミズーリ州・セントルイスにてサービス開始した、150MHz帯手動交換接続式自動車電話システムが最古です。のちに、1960年代、新たな周波数・400MHz帯が割当てられ、自動交換接続式のサービスも開始されました。
● 一方、日本国内においても、電電公社設立後間もない1950年代、自動車電話の研究が始まりました。1960年代、サウスウェスタンベル社の初期の自動車電話には実装されていなかった全自動交換方式、ハンドオーバー、小ゾーン方式の開発が進められ、1970年代、150MHz帯や400MHz帯よりも多くの通話チャネル容量を確保出来る800MHz帯が開発されました。こうして、1979年のサービス開始を迎えることになります。
● 1988年、NTT大容量方式のサービスを開始しました。これにより、通話チャネル間隔が、NTT方式=25kHz → NTT大容量方式=12.5kHzと半分になり、通話チャネル容量が、870MHz~885MHz(15MHz幅)で、NTT方式=600CH → NTT大容量方式=1200CHと2倍になりました。このため、別名をハイキャップ方式と言います。
● 「周波数」とは直接の関係はありませんが、同じく1988年、電話番号容量を増やすための地域指定方式 → 準地域無指定方式への置換えも実施されました。
● 1988年12月、旧IDO(現KDDI)が、東京23区内にて、1G(アナログ自動車電話,携帯電話)のサービスを開始しました。NTTドコモと同じく、NTT大容量方式/準地域無指定方式です。860MHz~870MHz(10MHz幅)が割当てられました。
● 1989年7月、旧DDIセルラー(現KDDI)が、大阪市内にて、1G(アナログ自動車電話,携帯電話)のサービスを開始しました。IDOと違い、モトローラ方式/準地域無指定方式です。IDOと同じく、860MHz~870MHz(10MHz幅)が割当てられました。
● モトローラ方式のサービス開始は、当時の日米貿易摩擦による日米協議において、1988年までNTTが独占していた日本国内の移動体通信市場に、1989年のアメリカ・モトローラの新規参入が実現したことによるものです。日本国内では、J-TACS、N-TACSの2つが使用され、通話チャネル間隔が、J-TACS=25kHz、N-TACS=12.5kHz、通話チャネル容量が、860MHz~870MHz(10MHz幅)で、J-TACS=400CH、N-TACS=800CHです。のちに、1991年10月、IDOもDDIセルラーに続いてサービス開始し、また、843MHz~846MHz(3MHz幅)が追加で割当てられました。
● 上表通り、ダウンリンク周波数(基地局→移動機)がアップリンク周波数(移動機→基地局)より低く配置されていました。これは、当時の地上アナログテレビ放送の周波数に470MHz~770MHzが使用されており、もし、ダウンリンクとアップリンクを逆にすると、テレビ受信機と自動車電話移動機との混信のリスクが考えられたためです。当然ながら、日本国内のみならず海外でも考えられるリスクでしたが、この様な配置を行ったのは、日本だけでした。
のちに、地上デジタルテレビ放送の周波数が470MHz~710MHzに圧縮され、携帯電話移動機の出力が200mW以下に抑えられ、総務省、移動体通信事業者、放送事業者によるフィールドテストを実施した結果、上記のリスクは解消したと判断されたため、日本国内でも海外と同じ配置に変更する方針が決まりました。地上アナログテレビ放送が終了した2011年7月24日以降(2011年の東日本大震災の被害が甚大だった岩手,宮城,福島3県のみ、2012年3月31日に延期)、総務省による「710MHz~960MHz」の周波数再編が実施され、2012年7月23日までに変更されました。
● 2023年現在も、800MHz帯は、NTTドコモ、KDDIの4Gに使用されています。
▶ 「地域指定方式」、「準地域無指定方式」については、4.5,4.6節にて後述します。
2.2. 周波数 - 2G
● 2Gには、800MHz帯に加えて、1.5GHz帯が新たに使用されました。
● 2Gと同時期に、PHSのサービスが開始され、1.9GHz帯が使用されました。便宜上、PHSも2Gに含める場合があります。
● 1993年、NTTドコモが、2G(デジタル自動車電話,携帯電話)のサービスを開始しました。ネットワークは、PDC方式が使用され、これは他の事業者も同様です。1Gから引続き、800MHz帯が使用され、加入者増加に伴う通話チャネル容量増加のため、周波数帯幅が15MHz(1G) → 29MHz(2G)に拡張されました。また、1994年より、1.5GHz帯が使用され、シティフォン(東名阪限定)、800MHz帯輻輳対策を開始しました。
● 1994年、旧IDO,DDIセルラー(現KDDI)が、2G(デジタル自動車電話,携帯電話)のサービスを開始しました。NTTドコモと同じく、1Gから引続き、800MHz帯が使用されましたが、周波数帯幅の拡張は2MHzに留まりました。また、NTTドコモと違い、1.5GHz帯は割当てられませんでした。
● 1994年、旧デジタルホン(現ソフトバンク)が、2G(デジタル携帯電話)のサービスを開始しました。1.5GHz帯が初めて使用されました。これは、800MHz帯がNTTドコモ、IDO、DDIセルラーに割当済で、しかも、他システム(MCA、RFID、特定小電力など)にも使用されていて空きがなかったためです。
1996年、旧デジタルツーカー(現ソフトバンク)も、2G(デジタル携帯電話)のサービスを開始しました。1.5GHz帯がデジタルホンに続いて使用されました。
● 1994年、旧ツーカー(現KDDI)が、2G(デジタル携帯電話)のサービスを開始しました。デジタルホンと同じく、1.5GHz帯が初めて使用されました。
● 1995年、DDIポケット、NTTパーソナル、アステルの3社が、PHSのサービスを開始しました。
● 携帯電話(1G、2G)には、ダウンリンク周波数(基地局→移動機)とアップリンク周波数(移動機→基地局)の区別がありますが、PHSには、その区別がありません。前者を「FDD」、後者を「TDD」と言います。
● 上表通り、2Gの周波数は、かなり煩雑になっています。これは、歴史的経緯により、移動体通信事業者に800MHz帯、1.5GHz帯の周波数がバラバラに割当てられていたためです。のちに、総務省による「710MHz~960MHz」の周波数再編が実施され、2012年7月23日までに整理されました。
● 2023年現在も、1.5GHz帯は、3事業者(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)の4Gに使用されています。また、PHSは2021年にサービス終了済ですが、1.9GHz帯は、sXGPなどの新しいシステムでの利用が計画されています。
■ 2Gについては、情報がかなり少なくなっているため、もし、誤記がありましたら、ご容赦ください。
2.3. 周波数 - 3G
● 3Gには、800MHz帯、1.5GHz帯に加えて、2GHz帯、1.7GHz帯が新たに使用されました。
● 3Gと同時期に、3.5G相当のBWAのサービスが開始され、2.5GHz帯が使用されました。
● 2001年、NTTドコモが、3G(W-CDMA)のサービスを開始し、2GHz帯が初めて使用されました。2006年、3.5G(W-CDMA/HSPA)のサービス開始時、800MHz帯も使用され、デュアルバンドになりました。
● 1998年、KDDI(当時はIDO,DDIセルラー)が、2.5G(cdmaOne)のサービスを開始しました。2002年、2.5G(cdmaOne)からの移行による3G(CDMA2000)のサービスを開始し、800MHz帯が1G、2Gから引続き使用されました。2003年、3.5G(CDMA2000-1x/EV-DO)のサービス開始時、2GHz帯も使用され(KDDIに続いて)、デュアルバンドになりました。
● 2002年、ソフトバンク(当時はジェイフォン)が、3G(W-CDMA)のサービスを開始し、2GHz帯がNTTドコモに続いて使用されました。2006年、3.5G(W-CDMA/HSPA)のサービス開始時、1.5GHz帯も使用され、デュアルバンドになりました。
● 2007年、旧イー・モバイル(現ソフトバンク)が、3.5G(W-CDMA/HSPA)のサービスを開始しました。1.7GHz帯が初めて使用されました。
● 2009年、旧ウィルコム(WCPに事業継承)が、XGPのサービスを開始しました。2.5GHz帯が初めて使用されました。
● 2009年、UQCが、WiMAXのサービスを開始しました。2.5GHz帯がウィルコムに続いて使用されました。
● 上表通り、3Gの周波数は、2Gと比較して、かなり見やすくなっています。これは、2GHz帯の新設に伴い、800MHz帯、1.5GHz帯の余剰な周波数が整理されたことによるものです。実際に、NTTドコモを例に挙げれば、2Gの「800MHz帯=29MHz幅」に対し、3Gの「800MHz帯+2GHz帯=33MHz幅」になっており、また、3Gに「800MHz帯=18MHz幅」を含むため、必要以上に削減された訳ではありません。尚、NTTドコモの810MHz~818MHzには2Gの制御チャネルを含み、KDDIの860MHz~870MHzには2.5Gの制御チャンネルを含むため、これらは、それぞれのサービス終了(総務省による「710MHz~960MHz」の周波数再編の最後)まで残されました。
● 2023年現在も、2GHz帯は、3事業者(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)の4Gに、1.7GHz帯は、4事業者(楽天モバイルを含む)の4Gに、また、2.5GHz帯も、引続き、WCP、UQCの4G相当のBWAに、それぞれ使用されています。
■ 3Gについては、情報がかなり少なくなっているため、もし、誤記がありましたら、ご容赦ください。
2.4. 周波数 - 4G
● 4Gには、800MHz帯、1.5GHz帯、2GHz帯、1.7GHz帯に加えて、900MHz帯が新たに使用されています。
他に、700MHz帯、3.5GHz帯も、当初は4G向けに割当てられましたが、2021年以降、移動体通信事業者各社により5G向けに転用されています。
● 4Gと同時期に、4G相当のBWAのサービスが開始され、2.5GHz帯が使用されています。
● 1.7GHz帯の内、1860MHz~1880MHzは、東名阪ではNTTドコモ、東名阪以外では楽天モバイル(5G)に割当てられています。
● 旧ワイモバイル(旧イー・アクセス)に割当てられていた700MHz帯、1.7GHz帯は、ソフトバンクへの吸収時に継承済です。尚、1.7GHz帯の一部は、「Dynamic Spectrum Sharing」(DSS)という技術によって、5Gに使用されています。
● 2023年10月18日、楽天モバイルへの初の「プラチナバンド」割当(770MHz~773MHz(3MHz幅))が発表されました。
● 上表通り、4Gの周波数は、2Gと比較して、格段に見やすくなっています。総務省による「710MHz~960MHz」の周波数再編が実施されたあとであるため、800MHz帯はもとより1.5GHz帯も、本当に整理が行き届いた印象ですね。また、3Gと比較すれば、移動体通信事業者向けの周波数が一気に広がっている様子がわかると思います。
2.5. 周波数 - 5G
● 5Gには、3.7GHz帯、4GHz帯、4.5GHz帯、4.7GHz帯、28GHz帯が新たに使用されています。全て、1G~4Gでは使用されたことがない周波数帯です。
先述通り、700MHz帯、3.5GHz帯が4G向け→5G向けに転用されており、また、1.7GHz帯の一部も5Gに使用されています。
● 28GHz帯にフォーカスを当てると、4Gの周波数帯(800MHz帯~2.5GHz帯)はもとより、同じ5Gである3.7GHz帯ですら、かなり狭く見えてしまいますね(汗)。
関連リンク
https://mvno.freebit.com/column/communication/frequency-reallocation.html
https://hyudaepon.net/2021/11/18/4534/
2.6. 周波数候補 - 6G
● 6Gの「特定実験周波数」にフォーカスを当てると、4Gの周波数帯(800MHz帯~2.5GHz帯)がどこにあるのか、もはや、ルーペが無ければすぐにはわからなくなってしまいました(笑)。
関連リンク
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01766/083000005/
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/15292/
2.7. 周波数帯一覧
3. 移動体通信事業者通信速度
「ドラゴンボールの戦闘力」の概念が生まれたのは、サイヤ人編でした。
確か、悟空=334、クリリン=206、亀仙人=139、天津飯=250、ヤムチャ=177、ピッコロ=329でしたね。
一方、「移動体通信の通信速度」の概念は、実質的に、2Gのサービス開始時に生まれました。(1Gでもデータ通信は可能でしたが、用途は音声通話に限定され、「音声信号の伝送速度」と定義されていたためです。)
当初は、携帯電話=9.6kbps、PHS=32kbpsでした。
そして、「ドラゴンボールの戦闘力」と「移動体通信の通信速度」の共通点は、短いスパンでのインフレ。
悟空の戦闘力は、
ラディッツ戦=334 → ベジータ,ナッパ戦=8,000 → ギニュー戦=180,000 → フリーザ戦=3,000,000
→ スーパーサイヤ人覚醒=150,000,000
およそ450,000倍のインフレです。
一方、NTTドコモの通信速度を例に挙げれば、
2G(1993年)=9.6kbps → 3G(2001年)=384kbps → 3.5G(2006年)=3.6Mbps → 3.9G(2010年)=75Mbps
→ 4G(2015年)=225Mbps → 5G(2020年)=3.4Gbps
悟空には少し及びませんが、約30年間でおよそ354,000倍のインフレです。
また、単位も、2G~3Gでは「kbps」、3G~4Gでは「Mbps」、5Gでは「Gbps」が使用され、現在は出番を待っている「Tbps」も6Gでのデビューの可能性があります。
では、通信速度の世代毎の推移、キャリア別の変遷を見てみましょう。
尚、ここでは、ダウンリンク(基地局→移動機)の通信速度の「理論値」を記載しております。商用環境での「実測値」とは違うことをご了承ください。
==================================================
「ドラゴンボール」の一幕を振り返らせていただきました。
2024年3月1日、鳥山明先生がご逝去されました。謹んでご冥福をお祈り申しあげます。
最初、この様な形でブログに掲載するのは不謹慎ではないかと考えました。しかし、「ドラゴンボール」に触れることが先生への哀悼の意になると考え、掲載させていただきます。
実際に、筆者自身、数年前からしばしば、「移動体通信の通信速度」のインフレの様子から「ドラゴンボールの戦闘力」を連想しております。仮に、1億人のファンがいらっしゃれば、1億通りの感じ方、楽しみ方があると思います。週刊少年ジャンプ連載(昭和59年~平成7年)、テレビ放送(昭和61年~平成9年)終了から数10年が経つ令和6年現在も、日本国内のみならず海外でも根強い人気を誇る、まさに、「時代を越えた、そして、国境を越えた不朽の名作」です。
尚、上記の「Z戦士たちの戦闘力」の描写は、単行本の17巻に登場します。是非ご一読なさってください。
==================================================
3.1. 通信速度 - NTTドコモ
● 移動体通信の最老舗の事業者なので、1G~5Gの全世代を網羅しています。
● 1Gの歴史を振り返る際、写真にもある、自動車電話、ショルダーフォン、携帯電話初号機などの非常に貴重な「遺産」を拝見することが出来ます。
● KDDI(UQ mobile)、ソフトバンク(Y!mobile)の様なサブブランドを導入していないため、通信速度の世代毎の推移がシンプルで一番見やすいですね。
● これらの事情により、世代毎の推移の前に、まずは、NTTドコモの変遷を貼らせていただきました。
3.2. 通信速度 - 1G,2G
● 2G時代の大まかな通信速度は、「数kbps」です。
● 当初は、携帯電話=9.6kbps、PHS=32kbps。現在ではとても考えられない低速ですが、2G時代に開始されたデータ通信は、当時としては非常に画期的なサービスでした。
● PHSは、携帯電話と比較して、音声通話のサービスエリアでは苦戦を強いられていた一方、主に、「安い基本料金」、「高い通信速度」、「小さい送信出力」を売りにシェアを拡大しました。特に、DDIポケットは、1999年、64kbpsへの高速化を実現しました。2001年、携帯電話の3Gのサービス開始時、通信速度そのものは追い抜かれてしまいましたが、携帯電話事業者のデータ通信の利用料金が高額だった一方、DDIポケットは、音声通話やパケット通信の定額サービスをいち早く開始し、携帯電話事業者との差別化を図りました。これらにより、「データ通信と言えば、DDIポケット。」と言われる時期が数年間続きました。
● 2G時代の主な用途は、SMS、Eメール、ノートPCと移動機を接続してのデータ通信です。
3.3. 通信速度 - 3G
● 3G時代は、通信速度によって3つに分けられます。明確な定義がある訳ではありませんが、大まかに言えば、2.5Gは「数10kbps」、3Gは「数100kbps」、3.5Gは「数Mbps」です。
● 2G時代と違い、事業者によってバラツキはあるものの、高速化技術を用いて、3Gから3.5Gに移行し、2011年時点では、9.2M~42Mbpsまで高速化しました。2023年現在のモバイル通信の主力・4Gには及ばないものの、本格的なモバイル通信の高速化の時代の到来です。
● PHSは、2009年時点で、ウィルコム(DDIポケットの後継会社)が唯一サービスを継続していましたが、この頃には、携帯電話事業者もウィルコムと同様の音声通話やパケット通信の定額サービスを開始していたため、競争に伸び悩む様になっていました。そこで、サービス開始したのが、次世代PHS・XGPです。NTTドコモ、ソフトバンクの3.5Gを上回る20Mbpsをたたき出しました。
● また、同じく2009年、UQCがサービス開始したのが、WiMAXです。XGPをさらに上回る40Mbpsをたたき出しました。
● 3G時代の主な用途は、移動機からのWEBサイトへの接続、これによる画像や動画の閲覧です。
3.4. 通信速度 - 4G,5G,6G
● 4G時代は、通信速度によって2つに分けられます。ある程度明確な定義があり、3.9Gは「数10Mbps」、4Gは「数100Mbps」です。
● 3.9Gから4Gへの移行には、「キャリアアグリゲーション」(CA)という技術が用いられました。「2つ以上の周波数帯を束ねる」という意味からこの様に名付けられています。周波数帯は必ずしも連続している必要はなく、例えば、「800MHz帯と1.5GHz帯と2GHz帯」の様に、不連続の周波数帯同士を束ねることも出来ます。
2014年、日本国内で初のCAを実施したKDDIを例に挙げます。
・ 2012年 800MHz帯×10MHz幅 → 75Mbps (3.9G開始/CA無し)
・ 2014年 800MHz帯×10MHz幅 + 2GHz帯×10MHz幅 → 150Mbps (4G開始/CA有り)
・ 2015年 800MHz帯×10MHz幅 + 2GHz帯×20MHz幅 → 225Mbps (4G高速化/CA有り)
・ 201X年 800MHz帯×10MHz幅 + 2GHz帯×20MHz幅 + 1.5GHz帯×10MHz幅 → 300Mbps
つまり、3.9G、4G共に同じネットワーク(LTE)を使用しており、CAの有無によって両者を呼び分けているということになります。また、CAを用いることにより、100Mbpsを越えるため、「数100Mbps」という4Gの定義も満足します。4Gに移行後は、3.9Gを単に「LTE」、4Gを「LTE Advanced」と呼ぶ場合もあります。
● 2009年にサービス開始したXGP、WiMAXは、その後、AXGP、WiMAX2+にそれぞれパワーアップして、いずれも100Mbpsを越え、LTEと並んで、4Gの一翼として活躍中です。
● 4G時代の主な用途は、移動機からの画像や動画のアップロード、移動機による動画のライブ配信です。
● 5Gは、3.7GHz帯(Sub6)によりサービス開始した2020年時点では「数Gbps」ですが、今後、28GHz帯(ミリ波)の広がりにより「数10Gbps」への高速化が期待されています。
● 6Gは、2030年(予定)のサービス開始時までに「100Gbps」を目指して研究や開発が進められています。将来的に、「1Tbps」も射程圏内になるかも知れません。
3.5. 通信速度 - KDDI
● 「新規参入第一陣」(旧社名=IDO,DDIセルラー)で、NTTドコモと同じく、1G時代からの老舗です。
野球チームに例えれば、NTTドコモが巨人なら、IDOが中日、DDIセルラーが阪神と言ったイメージでしょうか。(営業エリアは、IDOが東京,名古屋地区、DDIセルラーが大阪,沖縄を含むそれ以外の地区でした。)
● 写真にはありませんが、IDO,DDIセルラーも、自動車電話を1G,2G時代に、ショルダーフォンを1G時代にリリースしています。
● 我が国で唯一、2.5G(cdmaOne)を商用化していること、サブブランド(UQ mobile)を導入していることもあり、各世代の情報のレパートリーは非常に豊富ですが、その分、通信速度の世代毎の推移が若干複雑ですね。
● 個人的には、27年来のKDDIファンなので、すごく味があって良いと思います。
● ソフトバンクは、「新規参入第二陣」(旧社名=デジタルフォン,デジタルツーカー)で、2G時代からサービス開始しています。
● 激動の3G,3.5G時代を経て、4Gがモバイル通信の主力となった現在、NTTドコモやKDDIとネットワーク品質やサービスで十分に勝負出来る事業者としてシェアを着実に拡大し、「大手3事業者」の一翼を担います。
● 楽天モバイルは、2023年現在の報道通り、まだ志半ばですが、身近なところ(日本国内)にソフトバンクの様な実例も存在します。6Gサービス開始予定の2030年頃には、シェアが20~25%まで拡大すると良いですね。これは、楽天モバイルの加入者の皆様、現場でご活躍されているエンジニアの皆様は勿論ですが、他事業者の加入者の皆様も強く願っていることだと思います。
● 2023年10月18日、楽天モバイルへの初の「プラチナバンド」割当が発表されました。すぐに品質やサービスで「大手3事業者」と勝負出来るとまではいかなくとも、同社のみならず移動体通信業界全体における大きな一歩になることは間違いないでしょう。
● こちらも、野球チームに例えれば・・・と思ったら、ガチで入っていますね。しかも、2チームも(笑)。
思い切り脱線し、野球の話題になってしまいますが、2006~2008年の3年間、ソフトバンクホークスは王貞治氏、楽天イーグルスは野村克也氏がそろって監督を務めました。両氏は、NPB通算本塁打ランキングのTOP2です(王氏=868本、野村氏=657本)。この様な監督同士の対決は、令和時代には見るのが難しくなるかも知れませんね。
3.7. 通信速度と主要用途 - NTTドコモ
4. 移動体通信事業者向け電話番号
1979年、旧電電公社(現NTTドコモ)が自動車電話のサービスを開始した当初は、「030」から始まる10桁の電話番号で、電話番号容量(指定可能な番号数)は、合計10万回線のみでした。のちに、1988年の準地域無指定方式の導入⇒合計1000万回線に、1999年の自動車電話,携帯電話番号11桁化/「090」⇒合計9000万回線に、2002年の「080」の指定⇒合計1億8000万回線に、2013年の「070」の携帯電話向けの解放(1999年時点では一部をPHSに使用中)⇒合計2億7000万回線に増えて、現在に至ります。
平成時代初期の実際の加入者数の推移(推定)は、次の通りです。
1989年=25 → 1992年=137 → 1994年=213 → 1996年=1032 → 1999年=4152 (単位:万回線)
1980年代、普及拡大の障壁となったのは、①当時は未だ法整備が十分に進んでおらず、機器類は全て事業者からのレンタル品であったこと、②イニシャルコスト(新規加入手数料,保証金)、ランニングコスト(基本使用料,通話料金)が非常に高額であったことです。また、③当時のアナログ方式の周波数利用効率が低かったこと、④旧郵政省(現総務省)から唯一割当てられていた800MHz帯の周波数幅が合計28MHz(ダウンリンク)のみと狭く、通話可能なチャンネル数が限られていたこともあり、もし、加入者を増やし過ぎると、通信障害が多発するリスクも考えられるという技術的な事情もありました。このため、1992年頃までは、企業幹部の社用車や政治家の公用車の自動車電話などに限られていました。
潮目が変わったのは、1993年のデジタル方式のサービス開始(⇒上記③解消)と、1994年の自動車電話,携帯電話買取制度開始(⇒上記①解消)。同時期に、800MHz帯の周波数幅の拡大と1.5GHz帯の使用開始(⇒上記④解消)。さらに、基本使用料,通話料金の値下げと新規加入手数料,保証金の廃止(⇒上記②解消)。こうして、普及拡大のお膳立ては、徐々に整っていきました。
実際に、筆者が旧IDO(現KDDI)に加入した1996年時点(推定1032万回線)では、社長さんや代議士さんだけでなく、自分の周囲の身近な方たちへの普及もだいぶ実感出来る状況でした。もっとも、自分がこの時期に加入した一番の理由は、最も古くから存在する「030」から始まる電話番号が欲しいというものでしたが(笑)。
加入者数の1億回線超え、実質的な「1人1台時代」(20歳以上)の到来は、また別のお話(2008年)です。
では、電話番号についても、もう少し細かく見てみましょう。
ただし、本章の後半は、最も長く活躍した「030」(現在の「090-3」)を労うため(?)の雑談になっていることをご容赦ください(笑)。
● 自動車電話,携帯電話の番号(10桁)のプレフィックス(上3桁)には、「030」が初めて指定されました。自動車電話のサービス開始の1979年から、PHSのサービス開始前年の1994年まで、「携帯電話と言えば030。」という時代が約15年間続きました。
● PHSの番号(10桁)のプレフィックス(上3桁)には、「050」が初めて指定されました。1995年にサービス開始し、1996年には「060」も指定されたため、「PHSと言えば050。」という時代は約1.5年間でした。
● 1990年代の自動車電話,携帯電話,PHSの急速な普及拡大に伴い、1999年、電話番号が10桁→11桁に移行されることになりました。プレフィックス(上3桁)には、自動車電話,携帯電話の「090」、PHSの「070」がそれぞれ指定されました。
・ 030 → 090-3、080 → 090-8、010 → 090-1、020 → 090-2、040 → 090-4、090 → 090-9
・ 050 → 070-5、060 → 070-6
「090」、「070」が11桁化時にそれぞれ指定された理由は、11桁化前に使用されたことがなく、不公平感をなくすためでした。ただし、「090」は6か月(1998年7月~同12月)だけ、11桁化前にも使用されました。
● 上記の経緯から、現在(11桁化後)の「090」は、10桁時代から存在しのちに11桁になった番号と、11桁時代に初めて存在した番号の2つに分かれます。後者は、次の通りです。
・ 090-7、090-6、090-5
● 上記の経緯から、現在(11桁化後)の「070」は、10桁時代から存在しのちに11桁になった番号(PHS向け)と、11桁時代に初めて存在した番号(携帯電話向け)の2つに分かれます。後者は、次の通りです。
・ 070-1、070-2、070-3、070-4、070-7、070-8、070-9
● 一方、現在(11桁化後)の「080」は、全て11桁時代に初めて存在した番号です。尚、「080」そのものは10桁時代にも使用されましたが、現在は11桁化により「090-8」になっており、現在の「080」とは違います。
● 平成時代中期~令和時代初期の実際の加入者数の推移(推定)は、次の通りです。
1999年=4152 → 2002年=6918 → 2008年=10299 → 2013年=13530 → 2023年=21100 (単位:万回線)
※ 2002年、「080」を指定。2013年、「070」を携帯電話向けに解放。
2023年現在、「1人2台持ち」、例えば、「個人で1台所有、会社から1台支給。」とか、「電話用にガラケー、WEB用にiPhone。」(筆者もその一人です。)とか、珍しくありません。2億回線超えは十分頷けますね。
4.2. 携帯電話番号容量
● 総務省HPにて、「090」,「080」,「070」に分けての移動体通信事業者の情報が閲覧出来ます。
電気通信番号指定状況 -> 音声伝送携帯電話番号
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/top/tel_number/number_shitei.html
● 上表では、「090」,「080」,「070」に分けて、それぞれ古くから存在する順番に並び替えて、2023年7月1日現在、どの移動体通信事業者向けに指定されているかを集計しております。
● ただし、2006年、モバイルナンバーポータビリティ制度(MNP)が開始されているため、実際の加入者の使用状況は、上表と違うことをご了承ください。
例えば、「090-3546-GHJK」という番号が存在するとします。この番号は、回線契約当初の事業者は、KDDIとなります。ただし、MNPにより、電話番号を変えずに、他事業者(NTTドコモ、ソフトバンク、楽天モバイル)の回線契約への変更が出来る様になっています。また、仮に、MNPの後、回線契約の名義変更を行う場合、事業者がリセットされてKDDIに戻ることはなく、名義変更時点で回線契約していた事業者が引き継がれます。
● 上表でも集計しておりますが、2023年現在、「090」+「080」の1億8000万回線は、全てが3事業者(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)のいずれか向けに指定されていて、「070」の9000万回線は、88.6%に当たる7970万回線が4事業者(楽天モバイルを含む)のいずれか向けに指定されています。
● 「090」の3事業者の割合は、NTTドコモ:KDDI:ソフトバンク=57.0:26.0:17.0。1990年代の2Gの全盛期、NTTドコモが加入者のシェアで圧倒していたため、KDDI、ソフトバンクとの差が大きくなりました。一方、KDDIの26.0%には、2005年に統合した旧ツーカーも含むため、ソフトバンクを上回っています。
● 「080」の3事業者の割合は、NTTドコモ:KDDI:ソフトバンク=39.3:25.6:35.1。200X年代の3Gの全盛期、KDDIが加入者のシェアを拡大したため、NTTドコモとの差は小さくなりました。一方、ソフトバンクの35.1%には、2015年に統合した旧ワイモバイル(旧イー・モバイルの後継会社)の携帯電話も含むため、KDDIを上回っています。
● 「070」の4事業者の割合は、NTTドコモ:KDDI:ソフトバンク:楽天モバイル=26.7:29.6:33.7:9.9(2023年現在)。2010年代に4Gがモバイル通信の主力となってから、3事業者(楽天モバイル以外)の差はさらに小さくなりました。ただし、ソフトバンクの33.7%には、旧ワイモバイル(旧DDIポケットの後継会社)のPHSに使用されていた番号も含むため、NTTドコモ、KDDIを上回っています。
● 今後、仮に、楽天モバイルをはじめ、加入者のさらなる増加が見込まれる場合、新たなプレフィックス(上3桁)が検討されることになります。2023年現在、「010」は国際電話、「020」はM2M、「050」はIP電話に指定されているため、空いているのは、「030」、「040」、「060」です。
4.3. 自動車電話,携帯電話,PHS番号のプレフィックス (番号上三桁)
● 4.1節をサマリー化すると、上表の様になります。
● 自動車電話のサービス開始の1979年から、PHSのサービス開始前年の1994年まで、「携帯電話と言えば030。」という時代が約15年間続きました。昭和時代後期、平成時代初期から自動車電話,携帯電話を愛用している方にとっては、電話番号に愛着があるだけではなく、「030」だったことがちょっとした自慢のネタだったりします。筆者もそんな1人です。
それが行き過ぎて、電話番号11桁化少し前の1996〜1998年頃、所謂「携帯電話番号マウンティング」がかなり流行りましたね(笑)。「030は最強の番号だ。」とか、(例えば、自分が「030」で友人が「080」なら)「ヨシ!俺の勝ちだ!」みたいな・・・。現在は、「030」の引退から24年が経過し、また、平成生まれの若い方たちと行動する機会も増え、そんなことも殆んど無くなっていて、もはやお伽話(?) の一つになってしまいましたが・・・。
● その「030」(現在の「090-3」)については、4.4節でさらに深掘りします。
4.4. 旧「030」から始まる自動車電話,携帯電話番号
● 時系列(1979~1994年)で電話番号と移動体通信事業者を要約すれば、次の通りです。
030-10~19 (現在の 090-3100~3199) : 1979〜84年、旧電電公社(現NTTドコモ)向けに指定。
030-20~29 (現在の 090-3200~3299) : 1988〜89年、NTTドコモ(当時はNTT)向けに指定。
030-50〜56 (現在の 090-3500~3569) : 1988〜89年、旧IDO(現KDDI)向けに指定。
030-70~79 (現在の 090-3700~3799) : 1989〜92年、旧DDIセルラー(現KDDI)向けに指定。
030-30~39 (現在の 090-3300~3399) : 1994年、NTTドコモ向けに指定。
030-57〜59 (現在の 090-3570~3599) : 1994年、旧IDO(現KDDI)向けに指定。
030-60〜64 (現在の 090-3600~3649) : 1994年、旧DDIセルラー(現KDDI)向けに指定。
030-80〜84 (現在の 090-3800~3849) : 1994年、旧ツーカー(現KDDI)向けに指定。
030-90〜94 (現在の 090-3900~3949) : 1994年、旧デジタルフォン(現ソフトバンク)向けに指定。
● 「西部警察」や「あぶない刑事」をリアルで視ていた世代の皆様は、劇中で自動車電話を使用するシーンを視たという方もいらっしゃると思います。中でも、「西部警察」は、1980年代前半に放送され、東京23区を舞台にしていたので、最も古い「030-13」から始まる番号だったと見て間違いないでしょう。
● ちなみに、筆者の携帯電話は、WEB用のiPhoneの番号が上表のオレンジ色、音声用のガラケーの番号が上表のピンク色のグループに含まれます。
「おい、まさか、『携帯電話番号マウンティング』、お前もやっていたのか?」
そんな突っ込みをいただくかも知れませんね(笑)。ん~・・・、当たっているかも・・・(汗)。
4.5. [参考] 地域指定方式
● 4.5~4.7節では、「西部警察」の劇中で、大門軍団団長・大門圭介部長刑事(演=渡哲也さん)の専用車として活躍したスーパーZと、搭載されていた自動車電話にご登場いただきます。
● 地域指定方式は、1979年の旧電電公社(現NTTドコモ)の自動車電話のサービス開始当初に導入されました。電話番号10桁の構成は、次の通りです。
【上3桁=プレフィックス(030)】-【中2桁=地域指定コード(11~19に変化)】-【下5桁=加入者番号】
自動車電話の所在する地域(北海道~九州)によって、地域指定コードを変化させる方式です。
そのため、電話番号容量は、合計10万回線(5桁)のみでした。
● 自動車電話の地域指定コードは、固定電話の市外局番にどことなく似ていますね。
北海道では「11」/札幌市の市外局番は「011」。東北では「12」/仙台市の市外局番は「022」。
東京23区では「13」/東京23区の市外局番は「03」。九州では「19」/福岡市の市外局番は「092」。
● この方式は、自動車電話,携帯電話に指定された電話番号が「030-1」のみだった1979~1988年に使用されました。
4.6. [参考] 準地域無指定方式
● 準地域無指定方式は、1988年,1989年の旧IDO,DDIセルラー(現KDDI)の自動車電話,携帯電話のサービス新規参入に先駆けて導入されました。電話番号10桁の構成は、次の通りです。
【上3桁=プレフィックス(030/040に変化)】-【中2桁=事業者コード(固定)】-【下5桁=加入者番号】
自動車電話,携帯電話の所在する地点と発信者との距離(160km以内/以遠)によって、プレフィックスを変化させる方式です。事業者コードには、自動車電話,携帯電話事業者によって、違う番号が指定されましたが、自動車電話,携帯電話の所在する地域(北海道~九州)による変化はなく、固定されました。
これにより、電話番号容量は、合計1000万回線(7桁)に増やすことが出来ました。これは、地域指定方式の100倍です。
● 事業者コードは、4.4節にも一部記述しております。
地域指定方式の地域指定コードとして既に指定されていた「10~19」は、準地域無指定方式の導入後、NTT向けの事業者コードとして引続き使用され、新たに指定された「20~29」、「30~39」などと同様、地域による変化はなく、固定されました。
● この方式は、1988年の導入後、「030」に続く新プレフィックス・「080」、「010」が指定された1996年まで使用されました。
4.7. [参考] 地域無指定方式
● 地域無指定方式は、1990年代後半の「030」に続く新プレフィクス指定のラッシュに備えて導入されました。電話番号10桁の構成は、次の通りです。
【上3桁=プレフィックス(固定)】-【中2桁=事業者コード(固定)】-【下5桁=加入者番号】
自動車電話,携帯電話の所在する地点と発信者との距離(160km以内/以遠)による変化はなく、プレフィックスが固定されました。その結果、「030」に続いて、「080」、「010」、「020」、「040」、「090」の5つのプレフィックスが新たに指定されました。ただし、「080」は8か月(1996年1月~同9月)だけ、準地域無指定方式でも使用されました。
これにより、1998年7月時点で、電話番号容量は、合計6000万回線(7桁×6プレフィックス)まで増やすことが出来ました。これは、地域指定方式の600倍です。
● プレフィックスは、4.3節にも記述しております。
● この方式は、1996年の導入後、自動車電話,携帯電話番号が11桁化される1999年まで使用されました。ただし、これは、「地域無指定方式」という概念が無くなったと言うだけで、1999年以降も、何らかの条件で電話番号が変更になる様な運用は行われていないため、2023年現在も、この方式が実質的に継続しています。